【富士フィルムのCM】のインフルエンザウイルス検査技術は何がすごい
インフルエンザの検査技術といえば、みなさん御存知の富士フィルムのCMですね。毎年、必ず見かけると思います。
企業広告 TVCM「インフルエンザ検査技術」篇/富士フイルム
このCMで紹介されているインフルエンザの検査技術は何がすごくて、現在用いらているインフルエンザの検査技術とは何が違うのでしょうか。ここでは、これらの疑問を解決することにします。
富士フィルムが改良したイムノクロマト法
富士フィルムが開発したインフルエンザ検査技術は、イムノクロマト法を改良したものです。イムノクロマト法に関しては、以下で紹介しています。ここでは、イムノクロマト法を知っている前提で説明します。
通常イムノクロマト法は簡便で迅速な検査方法ですが、欠点があります。それは、ウイルスの数が少ない、インフルエンザの初期段階では検査結果が信頼できないことです。インフルエンザウイルスに感染しているにも関わらず、陰性になってしまうのです。
これは、発症初期段階では、インフルエンザウイルスの数が少ないため、検査の判定部を肉眼で見ても、色が付いていないように見えるからです。
富士フィルムが改良したこと
イムノクロマト法には、インフルエンザの着色に、発色する分子を使う場合と、金の微粒子を散りばめた水(金コロイド)を使う場合があります。富士フィルムの技術は、金の微粒子を用いる方法を改良した技術です。
結論から言えば、富士フィルムが改良したことは、以下です。
問題:「ウイルスの数が少ないと見えない。」
↓
改良:「金の微粒子にさらに大きなものをつければいいんじゃない。」
富士フィルムは金の微粒子に、大きな銀の粒子を付ける技術を開発しました。これは、写真を作る技術を応用しています。
金の微粒子と銀の粒子の大きさはどれくらい
イムノクロマト法で用いられる金の微粒子の大きさは50 nm(10 nmは1 mの1億分の1)程度です。そのため、ウイルスの数が少ない場合ウイルスを分離した後に、金の微粒子を目印に着色しているか判断するのが困難です。
そこで、富士フィルムは、分離後の金の微粒子に、化学反応を用いて銀の微粒子を付けました。銀の微粒子の大きさは、10 μm(10 μmは1 mの10万分の1)です。(日常的なかんかくですと、これでも小さいですけど。)
倍率で表すと大きさは1000倍です。身近なもので例えるなら、リンゴが、ジャンボジェットになるというサイズ変化とほぼ同じです。大きくなっているのが実感できますね。
金の微粒子、銀の粒子を実際と同じ大きさで書くと両方見えないので、倍率が実感できるような図を作成しました。金の微粒子は大きな点線に囲まれた方ではなく、小さな点線に囲まれた方です。この図でも金の微粒子は見えませんね。リンゴとジャンボジェットを、同時見えるように写真を撮るのが難しいのと同じです。
結果として見やすさも1000倍以上向上しました。そのため、ウイルスの数が少ない感染の初期段階でもインフルエンザか判断することが可能になりました。
富士フィルムの技術の凄い点
富士フィルムのインフルエンザ検査技術の優れている点は以下です。
- インフルエンザ初期段階で診断可能
- 機器を用いて診断するため、誤差が少ない
日本のインフルエンザ迅速検査の中で、富士フィルムのインフルエンザ検査技術は最好感度を誇ります。そのため、インフルエンザの初期段階でウイルスへの感染を判断できます。従来の技術を用いると、インフルエンザ発症後6時間の陽性率は70%程度でしたが、富士フィルムの技術を用いれば、発症6時間前の陽性率は約85%まで上昇します。その結果、より多くのに発症の初期段階で抗ウイルス剤を処方できます。(抗ウイルス剤の投与は早いほど効果が出る)
また、従来のインフルエンザ検査では、医師の目で診断結果を読み取っていましたが、富士フィルムのインフルエンザ検査技術では、機械を用いて判定するため誤差が少ないと考えられます。
まとめ
- 富士フィルムはイムノクロマト法を改良
- 粒子の大きさを1000倍にして視認度を上昇
- インフルエンザの初期段階で診断可能
- 機器を使って検査するため誤差減少