インフルエンザの検査で用いられている技術
本記事では、インフルエンザの診断に関し、医師が使用している検査法について解説しています。インフルエンザに罹った場合、病院で鼻やのどを綿棒でグリグリされた後は待つだけです。待っている間、病院は、何をしているのでしょうか。
病院で行われるインフルエンザの診断の流れに関しては以下をご覧ください。
1.採取した検体からどのようして診断
インフルエンザの簡易的診断法としては。イムノクロマト法が主に用いられています。病院でインフルエンザウイルスへの感染を検査している方法はこれです。(綿棒グリグリで採取した検体を、この方法で分析します。)イムノクロマト法のメカニズムを理解するのに必要な知識は、3つあれば十分です。まずはこれらを簡単に説明します。
(i)抗体と抗原
まずは抗体と抗原について説明します。必要な知識は以下だけです。
- 抗体・・・病原体の特定の部分と結合する物質
- 抗原・・・病原体の特定の部分で抗体が結合する部分
- ある抗体は特定の抗原と結合できるが、別の抗原と結合できない
抗体と抗原の関係は「鍵」と「鍵穴」の関係に例えられます。鍵(抗体)の形が異なれば、鍵穴(抗原)にはまりませんね。図を見ていただければ、分かると思います。
(ii)毛細管現象
毛細管現象。また難しい専門用語ですね。しかし、日常生活と関わりのないことではありません。
紙に水滴やインクを垂らすと徐々に浸透していき、滲むはずです。これが毛細管現象です。毛細管現象は、細い空洞を液体が自然に伝わっていく現象です。紙は無数の繊維が絡み合ってできるているため、目に見えない無数の穴があります。そのため、水滴や液体を落とすと、この穴を伝って浸透し滲むのです。
(iii)着色
インフルエンザウイルスは目に見えません。そこで検査結果を目で見て判断するためには、何らかの方法で着色をする必要があります。着色の方法は2通りあります。
- 抗体に発色する分子をつけておく方法
- 金の微粒子を使う方法
金の微粒子を水に均一に散らばらせると、赤く着色します。金の微粒子に抗体が吸着し、抗体にウイルスがくっつくので、ウイルスに色が付いたことになります。
2.検査法
具体的な検査法を説明します。インフルエンザウイルスを着色する方法は、金の微粒子を使うパターンで説明します。
判定部分に、インフルエンザウイルスの抗原と反応する抗体が塗布されています。この部分で、患者から採取した検体に、インフルエンザウイルスが含まれているか確認を行います。
(i)インフルエンザウイルスを着色
検体を標識抗体の上に垂らします。検体にインフルエンザウイルスが含まれると、インフルエンザウイルスの抗原と抗体が結合します。
この標識抗体は、金の微粒子に吸着しています。そのため、標識抗体とインフルエンザウイルスの抗原が結合することで、標識抗体を介して、インフルエンザウイルに色を付けることができます。
ただし、標識抗体に検体を垂らしただけでは、インフルエンザウイルと結合していない標識抗体にも色が付いているので、検体にインフルエンザが含まれるかどうか色からは判断できません。そこで、インフルエンザウイルスと、抗原に結合していない標識抗体を分離する必要があります。
(ii)インフルエンザウイルスを分離
標識抗体に滴下されたウイルスは、毛細管現象によりセルロースの膜上を伝わっていきます。(セルロースは紙を構成する物質なので紙と思って構いません。)このセルロースの膜上に、インフルエンザの抗原に反応する別の抗体がウイルスの型別に塗布してあります。
この部分まで、毛細管現象で伝わってきたインフルエンザウイルスが到達すると、抗原と抗体が結合してインフルエンザウイルスが固定されます。一方、インフルエンザウイルス以外の検体はそのまま、抗体が塗布された部分を通過します。
これをヒトの目で観察すると、インフルエンザウイルスが抗体を介して着色しているため、抗体を塗布した部分に色が着くことになります。この色を目印に、感染しているインフルエンザウイルスの型まで検査が可能です。
一方、インフルエンザウイルスと結合していない標識抗体や検体は、判定部分の後ろに標識抗体と結合する抗体が塗布されている部分まで膜を伝って移動します。この部分が着色しているか確認することで、毛細管現象により、標識抗体や検体が移動できているか確認できます。すなわち、検査に不備がなかったか確認できます。インフルエンザウイルスに未感染の場合は、この部分のみが着色されます。
5.まとめ
- 病院で使われるインフルエンザの検査法はイムノクロマト法
- イムノクロマト法では、インフルエンザウイルスの着色と分離を行っている